2014年5月27日火曜日

電界電子放出(FE)エミッター

FI-MS,FD-MS用のエミッタでは,針状結晶が長くなるにつれて
見た目のワイヤー径が太くなり,発生させる電界強度が落ちてしまう.
カーボンナノチューブやカーボンファイバーならば
根元が太くないため,長く成長させても見た目のワイヤー径が変わらない.
イオン化効率が格段に向上すると思うので,ぜひとも試してみたい.


FI-MS,FD-MS用のエミッターと非常によく似た技術に
電界放出電子源(FE)がある.

X線源(電子源)としてのカーボンナノチューブの利用には賛否両論ある.


奥山 文雄:使える
ドイツ,Hans-Dieter BeckeyのもとでFI-MS,FD-MS用のエミッター開発をしていた.
その後,名古屋工業大学でX線源を開発した.
1990年代後半に,世界で初めて,電界電子によるX線像を得た.
FI-MS,FD-MS用エミッターの炭素結晶成長を応用して,
カーボンナノチューブ群を用いたX線源を作製した.
日本放射線技術学会雑誌,2002年3月,309-313ページ
X線源の作製に関する論文で用いている基板は,
材質,形状からして,FI-MS,FD-MS用のエミッターと同じである.
つまり,針状結晶の代わりにカーボンナノチューブを成長させたものを作っている
これが質量分析に使えるか気になるが,適用したという記述はない.
M. Tanemura et al., J. Appl. Phys. 90, 1529 (2001).

現在(2014年)の研究室名はナノ機能材料研究室,教授は種村 眞幸で,
カーボンナノチューブを用いたSPMカンチレバーを開発している.
http://tane-lab.web.nitech.ac.jp/index.html


鈴木 良一:よくない
カーボンナノチューブをX線源として用いると
強力な電界でカーボンナノチューブが基板から剥がれてしまう.
カーボンナノチューブは,その径が基板から先端まで同一であり,
根元にまで高電界が及ぶことが破損の原因であるため,
根元に向かうにつれて太くなる形を採用した.
針葉樹型をしており,先端にはナノレベルの針状突起が出ている.
産総研計測フロンティア部門公開シンポジウム報告集
https://unit.aist.go.jp/riif/ja/results/publication.html
第9回シンポジウム,117ページ,極微欠陥評価研究グループ




電界イオン顕微鏡(1951年)
エミッターに正電圧をかけて,試料を電界イオン化(FI)する.
これにより,世界で初めて原子の観察に成功した.

電界放射顕微鏡(1937年)
エミッターに負電圧をかけて,電子を放出させる.